ブナ帯 食ごよみ

<現代に生きるブナ帯文化>
 ブナ帯(夏緑落葉樹林帯)の自然からうまれ、育まれた「ブナ帯文化」は、二万年といわれる永い蓄積の歳月をへて縄文土器の誕生をむかえる。今から大よそ一万三千年まえのことである。
 ここに、弥生文化が登場し参加するまでの一万年間の「ブナ帯文化」を特に「縄文文化」とよぶが、その後近年まで縄文文化は弥生文化のかげになり、もはや現代とは無縁の化石的存在とされ、母体である「ブナ帯文化」も気配を消していた感がある。
 しかし、この間もブナ帯の自然にははなやかな四季が訪れ、そこに生きる植物や動物を育み、
“世界でもっとも豊かなブナ帯”を形成しつづけていたし、それは今もかわらない。ちなみに日本をふくむ東アジア、ヨーロッパ北西部、アメリカ北東部が、世界の三大ブナ帯といわれる。
 戦後のはげしい近代化によって、すでに百年足らずでいきづまっている日本の文明社会は、エコ、環境そしてモッタイナイを旗印に、いま必死に打開の道を模索している。その糸口の一つは三万年以上健在な“ブナ帯の自然”と「ブナ帯文化」の中にあるのではないか。
 日本、特に東日本の「基層文化」である「ブナ帯文化」が、そして先ずそれらを育てた“ブナ帯の自然”が、じつは先史時代から今日まで、人々の感性、文化、そして生活を、裏になり表になってささえつづけていることを、ここに暮らす方々の日々から、あらためて気づくのである。

ブナ帯食ごよみは、全国農業新聞に掲載されたものです。

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